ネパールの未来:脆弱な緩衝国から「南アジアのスイス」へ
小国の大きな選択
ネパールはしばしば脆弱な国家として語られる。内陸国であり、侨匯に依存し、統治は脆弱、そしてインドと中国という二大国に挟まれている。しかし、このような叙述は小国が持つ潜在力を見落としている。歴史が示すように、小国は柔軟性が高く、改革を迅速に進め、他国の成功モデルを制度として取り入れることができる。
アイルランドは低税制で多国籍企業を誘致し、貧困国からヨーロッパのテック拠点へと変貌した。シンガポールは資源を持たずとも清廉な統治と長期的戦略で繁栄を築いた。ノルウェーは石油収入を世界最大の主権基金へと転換した。そしてスイスは内陸国でありながら、中立・安定・繁栄を象徴する国家となった。
ネパールも同じ道を歩むことができる。歴史家・許倬雲が述べるように、リーダーには「自らの視界を超えた遠見」が求められる。ネパールは制度設計によって弱点を強みに変えることができる。
赦免、正義、公民エクイティ基金
改革の出発点は新たな社会契約である。ネパールの政治階層は長年にわたり腐敗と利権に絡め取られてきた。すべてを刑罰で裁くのは非現実的であり、報復の連鎖を招くだけだ。現実的な道は、一度限りの赦免と資産返還プログラムである。
この制度は、不正資産を返還することを条件に、法的赦免を提供するものだ。ただし、金銭に限らず、南アフリカの「真実和解委員会」のように、司法操作・警察腐敗・官僚の搾取といった制度的な不正を公開し、認めることも求められる。財産の返還と真実の告白を組み合わせて初めて、国民的な正統性を回復できる。
返還資産と天然資源収入は公民エクイティ基金(CEF)に注入される。この基金はノルウェー方式をモデルとし、無料の医療、教育、基礎的生活保障をすべての国民に提供する恒久的な財源となる。生まれた瞬間から、すべてのネパール人は国家繁栄の株主となる。
競争力ある経済青写真
再分配だけでは十分ではない。ネパールは成長しなければならない。その経済戦略は他の小国の成功例を組み合わせたハイブリッド型である。
• 低税制による投資誘致。 アイルランドを手本に法人税率を5%に設定し、外資を呼び込む。
• 免税ゾーンとショッピング拠点。 香港やドバイのように自由貿易・金融ハブを構築。
• 輸出主導型製造業。 台湾の経験を参考に、自給農業からブランド輸出へ転換し、繊維・農業技術・グリーン技術を推進。
• 観光の多角化。 登山観光に依存せず、文化観光・ウェルネス・エンターテインメントを開発(マカオやラスベガスのモデル)。
• 再生可能エネルギー輸出。 豊富な水力発電を活かし、南アジアのグリーンエネルギー供給国に。
• オフショア金融。 厳格な規制の下で会社登録や銀行サービスを展開し、インド・中国資本の受け皿となる。
これは世界各国のベストプラクティスを融合しつつ、ネパール独自の青写真を描くものである。
ポピュリズムを防ぐガードレール
多くの資源国では、基金がポピュリズム的な支出で崩壊してきた。ネパールはノルウェー型の財政ルールを採用すべきである。すなわち、CEFからの年間引き出しを長期実質リターンの3%以内に制限し、憲法に明記する。さらに、毎年ホワイトペーパーを公開し透明性を確保する。
また、司法の独立、メディアの自由、内部告発者保護、デジタル反汚職システムといった統治改革が不可欠である。これらなくしては、いかなる青写真もエリートによって骨抜きにされる。
「緩衝国」から「橋梁国」へ
歴史的に、ネパールはインドと中国の間の緩衝国としてしか見られてこなかった。しかし、今後は中立的な橋梁へと立場を転換できる。
• スイスのように外交的中立を掲げ、南アジアにおける調停者となる。
• 国境の特区を通じて物流・仲裁の拠点となる。
• 水力発電の輸出で相互依存を構築し、印中双方にとってネパールの安定が共通利益となる。
こうしてネパールは駒ではなく、信頼されるパートナーとなる。
リスクと対応策
この戦略は大胆だが、リスクも現実的である。
• エリートの抵抗。 腐敗から利益を得る層は赦免や再分配に反発する。
• ポピュリズム圧力。 政治家がCEFからの過剰引き出しを主張する可能性。
• 地政学的干渉。 インドや中国が自国の利益のために政策に介入する恐れ。
• 実施疲労。 改革を政治サイクルを超えて維持することの困難。
対応策は明確だ。憲法による保障、国際的な監督、透明性を通じた市民の関与、そして試行プロジェクトからの段階的拡大である。
2035年の「小さな巨人」
2035年までに、ネパールは小さな巨人へと成長できる。
• インド、中国、国際社会から尊敬される中立国家。
• 製造業、観光、エネルギー、金融に支えられた繁栄経済。
• 富が公平に分配され、権利が保障され、尊厳が普遍的に確立された公正社会。
• 公民エクイティ基金によって資源が世代を超えて共有される持続可能な国家。
こうしてネパールは脆弱性を強みに、課題を機会に、小国を世界舞台における「小さな巨人」へと変貌させることができる。
結語
本稿で提示した前瞻的フレームワークは野心的だが実現可能である。それには勇気、規律、そして遠見が必要だ。最も重要なのは、新たな国家精神である。すなわち、ネパールの未来は地理や規模ではなく、想像し、設計し、前瞻を制度化する能力にかかっている。
もしネパールがこの道を歩むならば、前瞻の智慧を体現し、「南アジアのスイス」として、小国もまた大国の運命を形作り得ることを証明するだろう。

